最近では、海外出張や海外赴任へおもむく機会は、さほど珍しくないぐらい一般的になってきています。とはいえ、海外出張や海外赴任が予告されている場合でも、または突然の辞令にびっくり!という場合でも、はじめての海外出張はドキドキしますよね。旅行では何回も海外へおもむいたことがあっても、出張となるとさまざまな点で異なり、事前の準備がすべてを左右します。今回は、「はじめての海外出張」を控える人へ、安心して特攻できるように準備しておくべきリストをお教えします。
1. 海外出張で必要な持ち物リスト
日本国内とは異なり、どの国に出張するとしても治安や利便さの点から海外へ行ってから準備するのではなく、国内で必ず準備しておくべきものがあります。
必ず必要なもの
- パスポート
単なる身分証明書ではない、海外においては命の次に大切なものになります。 - 現金
現地通貨キャッシュへの両替を済ませておく。海外へ着いて真っ先に必要となるのは現金です。 - クレジットカード
もちろん海外で利用できるかどうか確認する。家族が海外赴任へ同行する場合には、家族カードも作っておくと便利です。 - トラベラーズチェック
いわゆる旅行用子切手のことです。T/Cと呼ばれ、海外で現金と同様に使えることや、紛失や盗難の際に再発行してくれるなどのメリットがあります。また、現金を外貨に両替するよりも有利なレートで購入できるのでおすすめです。銀行や郵便局、空港などで購入できます。
海外出張のために、パスポートをはじめて取得する人もいらっしゃると思いますので、パスポート申請から受領までの流れを説明しておきます。
<パスポート申請から受領までの流れ>
(1)パスポート申請のために必要な書類をそろえます。
- 一般旅券発給申請書1通
パスポート申請窓口にて発行(海外の日本大使館、総領事館、領事事務所においてはインターネットでダウンロードできます。日本国内においては平成29年11月10日まで試験運用していましたが、現在は終了しています)。 - 戸籍謄本(または戸籍抄本)1通
申請日前6か月以内に作成されたもの - 写真1枚
縦45ミリ×横35ミリの縁なしで、背景が写っていないもの。その他詳細については外務省HPを確認してください。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/pass_2.html - 本人確認書類
マイナンバーカード(通知カードは不可)、運転免許証など
これらがない場合には、健康保険証と会社の身分証明書(写真が貼ってあるもの)などの2点が必要になります。
どの書類が対象になるかは先ほどのHPにて確認してください。
(2)住民登録をしている都道府県のパスポート申請窓口で申請をします。
書類等に不備がない限り、申請から受領までには約1週間程度(土・日・祝日を除く)がかかります。海外出張を命じられたときにパスポートを取得していない場合には、できるだけ早めに申請を行ってください。
(3)パスポートを受領するときには以下のものが必要です。
- 申請のときに受け取った受理票
- 手数料
旅券の種類によって異なります。収入印紙もしくは収入証紙で支払います。旅券の種類 収入印紙※ 10年間有効な旅券(20歳以上) 16,000円 5年間有効な旅券(12歳以上) 11,000円 ※収入印紙は都道府県収入証紙(2,000円)を含んでおり、都道府県によっては現金で支払う場合もあります。
<パスポートをもっている人は要チェック!>
パスポートの残存有効期限を確認しましょう。
国によっては、入国時にパスポートに一定の残存有効期間が残っていることを入国の条件としているところがあります。残存有効期間とは、3~6か月としている場合が多く、まだ期限が切れていないからと油断していると当日トラブルとなることも考えられます。海外出張が決まったら、パスポートをお持ちの方も残存有効期間を確認しましょう。
では、残存有効期間が6か月未満である場合にはどうしたらよいのでしょうか?
その場合には、現在のパスポートを返納して新たにパスポートを受給することができます(残存有効期間が1年未満の場合)。ただし、その場合には残っていた期間は加算されないので注意しましょう。
<アメリカやカナダへ渡航する方へ>
アメリカへ短期商用または観光で90日以内の滞在を予定する場合(乗継であってもアメリカ行きの航空機へ搭乗する際にオンラインにて渡航認証を受ける必要があります)、電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization:ESTA)登録が必要になります。
アメリカ政府では、2010年9月8日以降、ESTA申請時に1人当たり14米ドルを課しています。通常はクレジットで支払いますが、渡航前にESTAの認証を受けていないと航空機等への搭乗や入国を拒否される場合があります。認証された場合の有効期限は2年間です。ただし、2年以内にパスポートの有効期限が切れてしまう場合には、パスポートの有効期限をもって無効となりますので注意してください。詳細は、米国国土安全保障省(税関・国境取締局)ウェブサイトにて確認してください。
https://esta.cbp.dhs.gov/esta/application.html?execution=e1s1
カナダへ渡航する際には、電子渡航認証(eTA)を必ず受けてください。申請時には7カナダドル、有効期限は最長5年かまたはパスポートの有効期限までになります。
http://www.cic.gc.ca/english/visit/eta-facts-ja.asp
<渡航する日程が決まったら>
外務省では、渡航日程が決まったら外務省海外旅行登録「たびレジ」もしくは在留届電子届出システム「ORRnet」への登録をすすめています。「たびレジ」は3か月未満の渡航を予定している人が、旅行日程・滞在先・連絡先などを登録すると、滞在先の最新の情報や緊急事態発生時の連絡メールが受けられるというシステムです。メールの宛先として、自分以外にも家族や職場なども登録することができます。
3か月以上海外に住所または居所を定めて滞在する場合は、その地域を管轄する日本大使館または総領事館に届け出なくてはなりませんが、「ORRnet」に登録しておくことで簡素化されるメリットがあります。
日用品
海外出張といっても、短期間か長期間、男性か女性によっても必要な日用品は異なります。ここでは、比較的短期間の場合にも必要な日用品について説明します。
- スマートフォンやパソコンの充電器
ポータブルのものが便利 - 変換プラグや変圧器
主要国のホテルでは貸し出してくれる場合も多い - 薬
持病がある方はもちろんですが、風邪薬や胃腸薬、頭痛薬、乗り物酔いの薬など準備しておきましょう。
<女性におすすめの必需品>
- ヘアトリートメント
海外のシャンプーやコンディショナーは日本人の髪質に合わない場合もあります。ヘアトリートメントがあると安心です。 - 化粧品
大きなものはスーツケースに預け入れて。手荷物にするなら100ml以内の容器に移し替えて、20センチ×20センチのジップ付のビニールに入れましょう。肌質も異なりますし、現地で購入するのはあまりおすすめしません。
<男性におすすめの必需品>
・髭剃り・・・電動でも剃刀でも、お使いのものがよいでしょう。また、シェービングフォームなども、海外製のものは日本人の肌質と合わない場合もあるので、持参することをおすすめします。
<その他あった方がよいもの>
必ずとはいいませんが、あった方がよいと思われるもののリストです。
- ウエットティッシュ
国によっては衛生面でも心配がある場合があり、持参していくとかなり重宝します。 - ホッカイロ
寒い地域に出張の際にはかなり役立ちます。持参する時にはスーツケースに入れてください。 - 洗濯グッズ
ある程度長期的な出張の場合、下着などは自分で洗濯できるよう準備していくと荷物が少なく済みます。1回分ずつ小分けになっている洗剤、洗濯バサミ、ひもなどがあると便利でしょう。 - マスク
さまざまな病気に対する予防対策としてはもちろんですが、機内やホテルは乾燥気味です。のどを守るためにも持参していると快適に過ごせます。 - 折りたたみ傘
短期間の出張で予報になくても持参しておくと安心です。現地でも購入はできますが、日本のようにどこででも手に入るというものでもありません。折りたたみ傘であれば機内に持ち込むことができます。 - 使い捨てのスリッパ
ホテルの室内にスリッパが常備していない場合もあります。使い捨てなら帰りに捨ててくることができて便利です。
海外出張をする前に知っておきたいこと
何日間の海外出張でも共通して、出発前に押さえておきたいポイントがあります。大切な仕事のために海外へ渡航するのに、事前準備不足のために、その仕事が台無しになってしまっては意味がありません。入念な準備が必要です。海外出張での仕事を円滑に行うために、事前に準備できることをまとめてみました。
スーツケースの選び方
スーツケースは頑丈なものを選びましょう。預けた荷物の扱いを日本国内と同じように考えてはいけません。国によっては乱暴な扱いをされることもあります。国内旅行とは別に、なるべく頑丈な作りのスーツケースを選びましょう。もちろん、できれば機内持ち込み規格同様に預け入れできる規格内(無料)に余裕でおさまるよう調整しましょう。
手荷物の基準は、各航空会社によって異なるので、渡航前に調べておきましょう。
たとえばANA(国際線)の場合
<無料で預けることができる手荷物の個数と重量>
座席クラス | ファーストクラス | ビジネスクラス | エコノミークラス※ |
---|---|---|---|
個数 | 3個まで | 2個まで | 2個まで |
重量(1個あたり) | 32㎏/70ポンド | 32㎏/70ポンド | 23㎏/550ポンド |
※プレミアムエコノミーを含む
<3辺の和は158センチメートル以内>
預け入れできる手荷物にはサイズに基準があります。この基準はスーツケースを販売しているお店も把握していることなので、海外出張のために新しく購入するのであれば、お店の人に相談しましょう。この基準以上の手荷物であれば「超過手荷物料金」を支払うことになるか、最悪預かってもらえないこともありますので注意が必要です。
<手荷物のサイズ>
A+B+C≦158センチメートル
(持ち手およびキャスター部分を含む)
仕事道具は手持ちバッグにする
海外出張において仕事ができなくなることがもっとも意味のない渡航となります。海外では、国内旅行のように預け入れた荷物が確実に届くという補償ができにくいことがあります。預け入れた荷物がに仕事道具を入れておくと、万が一荷物の到着が遅れた場合、仕事にならない可能性もあります。渡航後すぐに必要となる仕事道具については、機内に持ち込める手荷物品の中に入れるようにしましょう。
- 万が一に備えて海外旅行保険「航空機寄託手荷物遅延に対する補償」について
海外旅行保険の補償に付帯されている特約に「航空機寄託手荷物遅延」についても補償があります。これは、航空会社に預けていた荷物の到着が遅延したために、現地において購入やレンタルをせざるをえなくなった衣類や生活必需品の購入費用を補償するというものです。万が一、このように預けた荷物が遅れてくることがあっても、ただ待つより仕方なく、どうにもすることができません。せめて仕事ですぐに必要で重要なものは、肌身離さず持ち歩くことをおすすめします。
ちなみに、航空機の到着が遅れたために乗継機に乗れなかった、または天候不良などによる着陸地変更、欠航、航空会社の予約業務の不備により搭乗できなくて、予定外の宿泊が必要になった場合には、海外旅行保険の「航空機遅延」の補償を受けることができます。
宿泊先の予約について
海外出張先の宿泊手続きについては、会社で行ってくれる場合もあります。それは、出張者の手間を省き仕事に集中してもらうためでもありますが、経費管理の上でも会社にとっては有益です。国内外を問わず、宿泊先となるホテル等の宿泊費用は、利用する施設によって大きな差が生じます。宿泊先を出張者に任せてしまうと経費が割高になってしまう可能性もあることから、会社で宿泊先を指定する(予約する)、または宿泊費に上限を設定するなどを行っています。特に短期の海外出張に多く、バイヤーのように現地で飛び回るような仕事の場合には、出張者のモラルに任せるしかないのです。
時差ボケの予防方法
海外へ行く人の悩みのひとつに「時差ボケ症状」があります。せっかく海外へ行っても、しばらくの間「時差ボケの症状」に悩まされてしまうと、仕事で成果を上げられないかもしれません。そうなっては元も子もないことに。ここでは、時差ボケの予防方法を教えます。
<時差ボケの症状とは?>
時差ボケの代表的な症状は、睡眠障害や、日中の眠気、疲労感、頭痛などがあります。時差ボケは、時差が5時間以上ある地域へ急速に移動すると起こりやすくなる症状です。統計的には、西へ向って移動するよりも、東へ向かって移動する方が症状が出やすいようです。
<時差ボケを事前に予防する>
時差ボケを体験したことのある人ほど渡航前に気を付けていることがあります。それは①滞在期間が2・3日と短期間な場合と②滞在期間が比較的長い場合によって方法が異なります。
- 滞在期間が2・3日と短期間な場合
現地時間に無理に合わせようとせず日本時間の夜に睡眠を十分にとるようにすること - 滞在期間が比較的長い場合
渡航前には十分な睡眠をとるようにします。東側へ行く場合には、数日前から少しずつ早めに就寝するように慣らし、早く起床するようにします。反対に西側へ行く場合には、だんだんと就寝時間を遅らせて起床時間を遅くします。
到着後は現地の時間に合わせるようにします。また、人の体には「太陽光」によって体内時計を調整する働きがあります。到着後はなるべく外に出て、現地の時間に早く同調するように心がけましょう。
時差ボケの症状がひどい場合には、睡眠薬も有効です。ただし、睡眠薬の使用については先に医師に相談しましょう。また、眠れないからといってアルコールを過度に摂取することは避けてください。睡眠薬との併用はもってのほかです。
打ち合わせのスケジュールの組み方
仕事の火急さにもよりますが、渡航は予定通りのタイムスケジュールで進行するとも限りませんし、できれば到着した当日に大事な打ち合わせ等の予約を入れることはやめましょう。まずは、宿泊先に到着することを最初のミッションと考え、宿泊先で翌日の打ち合わせのための準備を入念に行うぐらいの余裕がほしいものです。1日(もしくは数時間でも)余裕があれば、万が一航空機が遅延する、手荷物が遅延するようなことがあっても対応できるはずです。
出張先のマナーを調べる
海外出張先のビジネスマナーや国のしきたりなどは、海外で仕事をするにあたって重要なポイントになります。海外出張先が決まったら、入念に調べておくことがビジネス的に成功するカギとなります。
たとえば、欧米ではビジネス上の挨拶として「握手」をすることが一般的ですが、強く握った方が相手に対し威圧もしくはやる気を表すことになり、弱い握手では相手にあまり興味がないと取られてしまうことがあります。また、握手を含めたボディタッチを好まない国もあるので、事前に下調べが必要です。
打ち合わせの際に「手土産」を持参する場合もあると思います。アジアでは有効ですが、欧米ではあまり意味をなさない場合もあります。そもそも「手土産=贈り物」と解釈され、禁止されている場合もありますか注意しましょう。
また、ドイツなどでは会議の際に入室や着席する際は年長者からというマナーがあります。社内で、以前にも今回の出張先に渡航した人がいれば詳しく聞くようにしましょう。
海外に渡航する人が、自身の安全を確保するための参考情報として、外務省が「外務省海外安全ホームページ」を作成しています。危険地域の情報やスポット的な情報などがあり、比較的安全とされている国への渡航を控えた人にも、ぜひ一読してみてほしい情報がたくさんあります。HP内の「海外安全ガイド」や「海外へ渡航するあなたへ~外務省からのお知らせ~」ではわかりやすく動画で海外での予防策・対処法を教えてくれます。
海外で車を運転する予定がある場合
海外出張の際に車を運転する可能性がある場合には、「国外運転免許証」を申請することができます。有効期限は発行日から1年間。ただし、日本国内で発行される「国外運転免許証」で運転できる国は、アメリカ、イギリス等をはじめとする「ジュネーブ条約」加盟国に限られるので注意が必要です。
家族が海外出張へ同行する場合の注意点
せっかくの海外出張ですから、「妻または夫、もしくは子どもも同行したい!」と思 うかもしれませんね。ホテルによってはツインであれば同額の場合も多いですし、経費でいただいた費用以外は自己負担で出せばいいのではないか?とも思います。
ただし、どの国に行くからということではなく、会社によって海外出張の定義が異なると思いますので、事前に相談してみましょう。また、家族が同行する場合、海外旅行保険にはそれぞれで加入するのか(保険料負担は会社か否か?も含めて)?万が一のときの手続き等も確認しておくべきでしょう。
まとめ
外務省調べによると、海外へ渡航した際のトラブルとして一番多く発生しているのは「窃盗被害」だそうです。海外でのトラブル全体のまさに約3分の1の割合をしめる状況です。日本国内で生活していると、この治安の良さが普通と感じ、その治安の悪さを話には聞いていたとしても実感できず、よって注意力が足りずにトラブルに巻き込まれてしまうようなことになってしまうのです。もちろん、どれだけ注意していたとしても予測できず、避けられないトラブルもあります。ですが、念には念を入れて慎重に行動することで、トラブルを予防することはできます。特にはじめての海外出張を控えた方は、情報を集めてみましょう。海外に出張や赴任した経験のある人に話を聞いてみたり、外務省HPにも掲載されている「海外安全パンフレット 虎の巻」や「海外邦人事件簿」などを読んでおきましょう。
海外でのトラブルで多いのは、窃盗被害の他に「落し物」や「病気・ケガ」です。
「落し物」については気を付けていただくより仕方ないのですが、万が一失くしてしまったときにはどうすればよいのか?事前にシュミレーションして確認しておきましょう。日本国内と異なり、落としたものはほぼ戻ってくることはないと考えましょう。あなたはパスポートや現金、クレジットカード、帰りの航空券を失くしたときに、まずどうしますか?万が一のときの連絡先は、別にメモでとっておくようにしましょう。
「病気・ケガ」のトラブル、ケガについては事故に巻き込まれるなど、突発的かつ予測できないことが原因でケガにいたる場合もあるでしょう。意外に多いのは「病気」で、渡航前の体調管理はもちろんのこと、無理のない出張計画を立てるなどの予防を心がけましょう。
「はじめての海外出張」はいかがでしたでしょうか?注意するべきことばかりになってしまいましたが、いずれも事前の準備によって予防や対策を備えることができます。
せっかく抜擢された海外出張ですから、さまざまなトラブルに負けないように備えて仕事に全力が発揮できるよう祈っています!
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